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2008年01月26日

Paulingのミステリー分子

『Pauling's mystery molecule』は、化学マニアの間では良く知られている分子の一つでしょう。佐藤健太郎さんの著書「有機化学美術館へようこそ」にも、最後のコラムに採り上げられています。この分子は、20世紀の天才Linus Carl Paulingが氏のオフィスの黒板に書き残した意図不明の分子で、Heptazine骨格にアジド基と2つのヒドロキシル基が結合しています。

Paulings_picture.jpg

ACSのC&ENで、2000年に「この分子の意味するところは何か?」という懸賞が企画されました。その結果については今更なので書きませんが、私の第一感をここに書き残しておきたいと思います。

私の着想はこちら↓

Paulings_mol.jpg

熱もしくは光でナイトレンが生成するところをきっかけに、端からぐるりと解けていって、最後にシアノナイトレンが1分子生成する、というもの。ほんとかいな。

ちなみに、シアノナイトレンは実在の比較的短寿命な分子で、二酸化炭素とよく似た直線型、C-N結合長は1.231~1.232Åであると実験的に求められています(*)。これの電子配置は二酸化炭素ではなく酸素分子に酷似していて(ルイス構造式を描いてみたり、分子軌道を組んでみるとわかります)、三重項が最も安定です。一番エネルギーの高いSOMOはこんな感じ↓

UB3LYP_aug-cc-pVDZ_opted_HOMO.jpg

いくつかの理論モデルで構造最適化をしてみました(MOPAC以外は基底関数をaug-cc-pVDZで統一)。PM6(OpenMOPAC)はかなり長め、MP2(WinGAMESS)はやや短め、HF,DFT(PC GAMESS)ではHFとB3LYPがちょっと長め、PBE0やO3LYPが良い一致を見せています。

結合長(Å)
exp.1.232(*1)
1.230 944±0.000 014(*2)
U-PM61.2464
U-HF1.2339
U-MP21.2268
U-B3LYP1.2340
U-PBE01.2322
U-O3LYP1.2322

ref.
*1 Herzberg, G.; Travis, D. N. Can. J. Phys. 1964, 42, 1658.
*2 Beaton, S. A.; Ito, Y.; Brown, J. M. J. Mol. Spectrosc. 1996, 178, 99.

2008年01月20日

近況とかいろいろ

今年に入って、Sn2反応の再評価をやってます。
単純な反応でも、計算で再現するのは大変だということが良く分かります。いろいろなモデル化学を試してみて、結局HF/6-31G(d)が一番再現しているのがまた…(MP2は活性化障壁を高く、DFTの多くは低く見積もってしまう)。
Hofmann転位についてもMOPACとGAMESSの両方で再計算中。来月の更新となる予定。

WinGAMESS 08(実際には2007.03 R6)がリリースされましたが、末永先生のD&DジョブポスティングBATファイル(お、何かかっこいいな)が同梱されました。pc-chem.infoでは古典的なやり方を書いてますが、これが同梱されたことで改訂が必要でしょう。もともとFacioには同梱されていて、私も使ってました。
このWinGAMESS 08ですが、私の環境ではいくつかのjobで並列計算がエラー終了します。具体的にはMP2絡みの計算で、MEMDDIが必要になる計算で起こっているよう。DDIに問題があるとしか考えられません(追記に出力例を書きました)。

今現在、重原子が70弱(total basis functions = 1185)という結構大きなMP2 single point計算をしてます。気が付いたらDASORTファイルが100GB到達目前!いや、そのHDD、150GBしか容量ないんですが…(汗 別に必須の計算でもないんで、止めて別の計算を流した方が今は効率がいいかも…

◆1/20 14:00に追記あり

典型的なオチ例(UMP2 Grad)↓

------------------------------ ----------------------------
DISTRIBUTED DATA UMP2 GRADIENT PROGRAM WRITTEN BY C. AIKENS
------------------------------ ----------------------------

DDI: Creating Array [0] - 5184x153=793152.
DDI Process 2: trapped a segmentation fault (SIGSEGV).
DDI Process 3: trapped a segmentation fault (SIGSEGV).
ddikick.x: application process 2 quit unexpectedly.
DDI: Creating Array [1] - 5184x272=1410048.
DDI Process 0: TCP Error in Recv.
TCP recv error: Unknown.
A fatal error occurred on DDI Process 0.
DDI Process 1: TCP Error in Recv.
TCP recv error: Unknown.
A fatal error occurred on DDI Process 1.
THIS CALCULATION IS RUNNING WITH MWORDS= 10, MEMDDI= 10, AND P= 2
MEMORY USAGE PER CPU IS 8*(MWORDS + MEMDDI/P)/1024 = 0.1 GBYTES.

MINIMAL REQUIREMENT FOR THIS RUN IS MWORDS= 1, MEMDDI= 5.
FOR P= 2, THE MEMORY USAGE PER CPU(CORE) WOULD BE 0.0 GBYTES.

ddikick.x: Sending kill signal to DDI processes.
ddikick.x: Execution terminated due to error(s).

segmentation faultは常にProcess 2/3の両方で起こるとは限らず、どちらかだけの場合も。私にはさっぱりわかりません。
WinGAMESS 08になって、シングルスレッド性能は上がってます。SIMOMM(B3LYP/6-31G(d):MM3)では15%ぐらいの計算時間短縮もありました。あとはMP2関連さえ克服できれば…

◆追記(1/20 14:00)◆
ソースコードからcygwinでコンパイルしたところ、ちゃんとMP2もパラレルで走りました。compddiのところでSYSVを切ってなかったのが原因ではないかと推測。
BandeiraはgfortranとACML3.6使ったってMLで書いてましたが、こちらはg77で実施。やっぱりちょっと遅いけど、R3よりは速くなってます。ACMLの使い方、わっからん…

2008年01月04日

UltraVNCで快適リモートデスクトップ

明けましておめでとうございます。

新年の挨拶もそこそこに、PCの話題を。
今月の20日に、Intelの45nmプロセスによる新CPU"Wolfdale"が発表されるとか。で、それに合せて1台組もうと画策しております。メモリの価格が非常に低くなっている今、8GB積んで64bitOSで計算しようという腹。本当はYorkfieldで4並列もいいのですが、TDPが高め(実際には消費電力は低いのだろうと思いますが、45nmプロセスではおそらくVIDにばらつきが出るのでTDP枠を保持して歩留まりを確保しているのでは?だとすると当たりハズレがあるのでは…)なので4 coreフル回転で1週間連続を考えると夏が怖い。
それはともかく、家にPCが増えてくると、ディスプレイの置き場所に困るわけです。というか、元から1台しか置くスペースが無いわけで、選択肢としては(1)PC切替器を使う(2)リモートデスクトップソフトを使う の2通りになります。(1)は現在使っていますが、HHKB Professionalの挙動が時々怪しくなる(一部のキーを認識しなくなる)ので、偶に面倒なことに。(2)はRealVNCを使っていますが、Winmostarのように軽い擬似3Dですら満足にぐりぐりできない。(1)はもうどうしようもないですから、改善できそうなのは(2)ということになります。
で、調べると「UltraVNC」なるものがパフォーマンスが高いとのこと。早速日本語版をNANASI's Home PageからDLし、計算用WSにインストールしてみました。

ultravnc_cap.jpg

か、軽い…!!
これは、RealVNCとは比べ物になりません!Winmostarのモデルも楽々ぐりぐりできます。驚いたのは、Jmolでタンパク質のBall-Stickモデルを自由に動かせること!をを、これはすごい。ネットワークトラフィックはどうなっているかと思ってタスクマネージャを見てみたところ、ぐりぐり中も最大で帯域の5%ぐらいまでしか使っていませんでした(GbEです)。これなら無線LAN経由でも結構できそう。

というわけで、今月末には2台のWSをUltraVNCで管理する形に落ち着く予定。