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諸熊分割によるS-O相互作用の解析

以前にS-O相互作用(硫黄原子と酸素原子のattractiveな相互作用)の計算についていくつか書きました。

S-O相互作用の計算に必要なモデル化学とは。
続・S-O相互作用の計算に必要なモデル化学とは。
続々・S-O相互作用の計算に必要なモデル化学とは。

最近、会社でS-O相互作用の話が出たので、以前やりかけていた諸熊分割についてまとめてみました。

モデル系として、適当かどうかはわかりませんが、チアゾールとアセトアルデヒドの相互作用系を選びました。どうしても硫黄の隣にある水素原子が相互作用をしてしまうのは避けられないので、純粋にS-O相互作用は見れませんが、比較対象として水とアセトアルデヒドの相互作用系を持ってきて、両者に本質的な違いがあるのかを見れば、何か分かるかも知れません。

計算の入出力はこちら
プログラムにはPC GAMESS 7.0.0を用い、構造最適化はPW91PW91/6-31G(d)で行い、諸熊分割はHF/6-311+G(d,p)で行いました。数値の単位はkcal/molです。

(a) Thiazole(TZ)-Acetaldehyde(AA) system
ES -4.90
EX +4.18
PL -1.75
CT -0.95
MIX +1.27
Total -2.14

(b) Water(WT)-Acetaldehyde(AA) system
ES -10.93
EX +10.07
PL -2.23
CT -2.38
MIX +1.43
Total -4.04

諸熊分割の各項についてはChem-Stationの「分子間にはどんな力が働いている?」という記事に簡単な紹介がありますので参考にしてください。
結果を見ると、S-O相互作用系(a)では水素結合系(b)に比べて相互作用におけるPL(分極)の寄与が大きいことが分かります。これは硫黄原子がソフトな(電子の束縛が緩い)性質を持っている=分極し易いこととよく対応していると考えられます。一方、CT(電荷移動)の寄与は水素結合系に比べて小さくなっていて、これはよく言われるn→σ*軌道間相互作用が想像以上に弱いことを示唆しているのでしょうか(S-O相互作用系をNBO解析してもこれといった軌道間相互作用が検出できないという話を、実際に計算をされた方から聞いたことがあります)。

上記の結果から推定できることをまとめると、

(1)S-O相互作用の主成分はO-とS+の静電相互作用である
(2)その次に重要なのは分極による誘起的相互作用で、S-O相互作用の特徴と考えられる
(3)S-O相互作用は水素結合に比べると弱い相互作用である

ということぐらいでしょうか。PLの寄与が大きいというのは硫黄原子の特質とマッチしていて受け入れやすいですね。私はこの相互作用について、静電引力で2分子が引き寄せられ、お互いの軌道が接近することで軌道の形がより安定な形へ変化して平衡点に達するようなイメージを描きました。皆さんはどうでしょうか?

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