« PC GAMESSってやっぱ速いのね。 | メイン | 大阪・新世界探訪 »

実験ノート電子化考

研究における実験ノートは最も大切な財産であり、資料であることは言うまでもありません。しかし、その量が膨大になったとき、データの活用は必ずしも容易ではありません。
以前に誰かが同じ実験をしていたとしても、それを紙ベースの記録から探し出すのは大変な作業です。そうこうしているうちに、実は同じ失敗実験を何人もの人が繰り返している…なんてことも実際にはあるようです。
もし全てのデータが電子化できれば、容易に検索が可能になりますのでそういった失敗は格段に減らすこともできますし、業務効率も上がるでしょう。

実験ノートの電子化には、市販のアプリケーション(例えばCambridge Soft社のE-Notebook)を用いるのが最も手っ取り早いですが、導入には結構なお金が掛かります(商用で$710/人,実際には大量導入で割り引かれるでしょうが…)。

ここに、一つの論文があります。
轟 眞市, 小西 智也, 井上 悟:``ブログを基にした実験ノート: 個人の研究活動を効率化する情報環境'', Appl. Surface Sci., 252, 7, pp. 2640-2645 (2006).
ブログのシステムを活用した実験記録環境は、非常に良いアイデアだと思うのです。

システム立ち上げ必要なものは、サーバ一台とOS(何でも),アプリケーション(Webサーバ/Perl/MySQLなど)。あとは個人PCからブラウザでアクセスすることになります。コストは格段に安く済みます。
問題のシステムの内容ですが、ある程度実験内容に特化したインターフェースが必要になります(化学構造式描画エリアや、試薬当量比計算テーブルなど)。データがFixしたらハードコピーを取って改変不可にする仕組みも必要ですね。第三者による電子承認システムも必要です。これらは決して実現不可能ではないでしょう。
ブログシステムの重要な利点に、トラックバックシステムがあります。ある実験が別の実験を参考にしていたり、また多くの実験はそれ単独ではなく連続したステップの一つになっています。それらを有機的に相互リンクで結びつけるのに、トラックバックは最適です。

問題は、電子ノートは今のところ「特許における証拠」としての地位を確立していないという点です。これはいずれ解消されるかもしれませんが、電子データの堅牢化と改竄テクニックは常にイタチゴッコですから、頭が痛いところです。アイデアとしては、ハードコピーを編集ロックされたPDFファイルとして出力して保管し、それと同内容のHTMLをデータベースに残す(こちらも一応編集ロックは掛ける)のが一案でしょうか。
第三者による承認も難しいですね。電子署名?ってどうなんでしょう??

いろいろ問題はあるものの、Web 2.0を活用する面白いシステムであることは間違いないでしょう。
フリーのブログシステムを改造して、それらしいものを組んでみようと思案中です(出来上がるのは当分先でしょうが…)

コメント

はじめまして。
私の論文をご紹介くださり、ありがとうございます。
Web2.0ベースの実験ノート、形が見えてきたら是非そのノウハウを公開してください。興味を持っている人は世界じゅうに居ます。
「特許における証拠」としての有効性が問われる原因は、米国特許における先発明主義への対応が主と認識していますが、かの国は近い将来先願主義に移行する見込みなので、重要性は低下していくのではないか、と考えています。

>轟さん
をを、早速コメント頂きまして恐縮です。
形にするまでは相当時間が掛かりそう(近くにAjaxの知識を豊富に持つ人が居れば加速する可能性あり)ですが、時間を見つけてトライしたいと思っています。できれば3年以内。それ以上経過したら、他の人が作ってしまうでしょうし…
特許における証拠の件ですが、先願主義に移行しても証拠としての堅牢性の重要度はあまり変わらないと認識しています。裁判沙汰で証拠として提示を求められたときに、電子ノートが地位を得ているとは言いがたいと思いますがどうでしょうか。いつ発案・実施したかが重要でなくなっても、記述内容を改竄できるかどうかは別次元ですので。

s2kさま
なるほど、おっしゃる通りですね。既に電子化実験ノートで商売をしていらっしゃるベンダーがどう対応しているか、が参考になるのでしょうね。例の論文が縁で株式会社アプライドナレッジの方々のお話を伺ったことがあります。このような製品は、投資する価値を見出した組織が導入するものですが、まずは個人が手作りベースでその有効性を体感すべきで、そのような人が増えるべきと思っています。

面白い情報を有り難うございます。ご本人からのコメントもさすがですね。
私からは余談で,小中高の「総合的な学習」の学習過程をポートフォリオというのに記録する手法があるのですが,そのポートフォリオを修士論文にしてしまう大学もあります。そこでも電子化が計画されているようです。

・ポートフォリオ インテリジェンス(金沢工業大学院Blog)
http://blog.kitnet.jp/mt/tokyo/archives/c/

あと,Googleの適当な個人向け無料サービスに置いておくと時間も記録されて証拠になるなんていうのも手抜きな方法として可能性はあるのかどうか。

コメントを投稿

(いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)