続・S-O相互作用の計算に必要なモデル化学とは。
空想の世界でモノを言ってもしょうがありません。ここは重い腰を上げて、X線構造が分かっている、S-O相互作用していると思われる分子について、計算してみることにしましょう。前回比較に用いたB3LYP,PW91PW91,MP2にHFを加え、最適化構造とX線構造の比較をしてみました。もちろん、X線構造は結晶中、計算による最適化構造は真空中ですので、それに起因するズレは避けられませんが、そこはとりあえず目を瞑るのが現在のセオリー(?)です。分子内相互作用ならそのズレは小さくて済むでしょう。
Walterらが報告している、スルフィン酸混合酸無水物型の化合物について計算しました(Liebigs. Ann. Chem. 1980, 14-27.)。結果のまとめは以下の通り。
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実に意外なことに、HF/6-31G(d)が平均的には最もよくX線構造を再現しています。一番重要なS-O相互作用の距離は、MP2とB3LYPが優れた一致を示しています。PW91PW91はどのパラメータについても化学的精度は得られず、これは基底系を6-311G(d)に拡張しても解消されません(このテーブルには出てきませんが、diffuse関数を追加しても大きな改善はありません)。
このHFがよい結果を与えるということは、決して驚くべき事実ではないように思います。誤差が相殺されて偶然実験値と近くなるのはよくあることで、そして惑わされてはいけない事態の一つですね。そして、系統的に基底系を改善したときに結果も伴って改善されるかどうかが、理論モデル選びの指標になるでしょう。現時点ではB3LYPとMP2が候補ですが、Ar2の計算結果を考えると、MP2の方がよいかなぁと思ってしまいます(B3LYPもかなり怪しい?J. Org. Chem., 2005, 9237 -9247,ではmPW1PW91使ってますし)。基底系を拡張した結果は、後日公開したいと思います。
(注:掲載していませんが、他にもPBE1PW91,X3LYP,B3PW91といったfunctionalも使って計算をしています。結果はいずれも惨敗。X3LYPやB3PW91は、PW91PW91よりはマシですが、それでもズレが大きく、化学的精度には程遠いです)