合成実験も楽しい…いや、独り言ですけど。
わたくしs2kは、こうしてWeb上では計算化学ネタを書き連ねているので、たまに計算が専門の研究者と勘違いされることがあります(あのクオリティで勘違いされると、本職に対して失礼な気すらしますが)。でも、中の人の本職は合成屋です。某企業で合成研究をやっています。
実は、つい最近まで実験はそれほど好きでもなかったのです。まぁ、だからこそこうやって趣味で計算をやっているのかも知れません。ですが、新しい化合物(合成例なし)をデザインし、自分の手で苦労して合成実験を繰り返し、その果てに目的物を手に出来たときの喜びは、他に例えようのないものでした。
計算の魅力は、手に取ることが出来ない(それは単に合成手段がないという意味や、単離不可能な不安定な構造という意味で)分子を手に取ったかのように扱うことが出来るところにあると、私は考えています。「取ったかのように」が味噌で、「実際に手に取る」のには敵いません。ですから、手に取りえないものを扱うのが一つの大きな目的になります。
それに対して、実験では作れるものに限りはありますが、分子を手に取ることができます。確かにこの世に存在せしめることができるわけです。ブラウン管(古いな)の中の幻影ではないわけです。この世で最初に自分が創り上げた、となるとその価値と充実感は途端に跳ね上がります。
両方の幸せをかみ締めることができる、今の環境に感謝しなくてはなりませんね。